日々考えよう


by kunihisaph
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3月も終わり

2010年も四分の1が終わり.

単著のゲラがやっと届く.来月半ばくらいまでに校正をしないと.

あとは,すでに書いたとおり,シンポジウムの講演をしたくらいか.

来月は所内での研究成果発表がある.

あと,少し先の話だが,6月締め切りの論文をそろそろ書き始めないといけないのかな.

で,共著についても,こんどほとんどの共著者たちとおそらく名古屋で会うので,そこで相談をしないと.

はあ.来週から授業が始まるのか.はあ.まあ,週2コマくらいでため息ついてちゃいけないんだけどね.
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by kunihisaph | 2010-03-31 18:16 | 研究生活

アマチュア精神

女子フィギュアスケートの浅田真央選手が先日開催された世界選手権で優勝した.

今シーズン序盤ではノーミスで滑りきることができず,キム・ヨナ選手との直接対決でも大差をつけられ負けていた.

周囲からは,プログラムが悪い,現行のルールではリスクがあってリターンの少ない3Aにこだわらず,キムヨナ選手のように,難易度の低い(といっても,一般レベルの選手からすると十分に難易度が高いと思うが)プログラムをノーミスで高い質でやるようにした方がいいなどといった声も聞かれた.マスメディアでは,正直「浅田真央バッシング」とも取れるような記事もしばしば見られた.

しかし,彼女は3Aにこだわって,そしてシーズン最後の大会で,2008年のGPファイナル以来久しぶりにキムヨナ選手との直接対決を制して優勝した.

キムヨナ選手は,ある意味「プロ意識」が高いと思う.いまのコーチの指導を受け始めたばかりの頃は3Aに挑戦したいと思っていたようだが,コーチから「勝つためには3Aをあきらめろ」と言われ,それを受け入れ,現行ルールを徹底的に研究して,「勝つため」にオリンピックシーズンには前シーズンとほとんど変わらないプログラムをもってきて,個々の技の質を高めることに専念した.

もちろん「前シーズンと変わりない」「難易度の低い」といっても,本番でノーミスで滑りきることは難しいだろう.それをやり遂げる彼女の精神力も含めてプロとしての意識が強いと思う.

アマなのだが,「なにがなんでも絶対に勝たなければいけない」という意識が強く,そういう意味でここでは「プロ意識が強い」と言っている.もちろん,それはそれで賞賛すべきであり,誰にでもできることではない.

一方,浅田選手の3Aへのこだわりは,たしかに「プロ」としての意識には欠ける(実際にアマチュアなのだが).4回転ジャンプを捨てて,「勝つため」のプログラムを選択した安藤美姫選手の方がプロ意識が高いといえる.

しかし,浅田選手のアマ精神は,アマチュアのいいところがあらわれたものだと思う.「なにがなんでも勝てばいい」というものではなく,「自分の信念の貫いたうえで」勝たなければ意味がない,という偏屈ともいえるほどのこだわり.

もちろん,そのこだわりが「勝てないことへの言い訳」になれば意味がないが,彼女は現行ルールへの不満を言わずに,「勝てないのは自分が未熟だから」として技を磨きつづけた.そこがすばらしい.

そして,その結果がシーズン最後の大会でのオリンピック金メダリストを抑えての優勝である.

日本人だからという贔屓目もあるのかもしれないが,これほどの選手は,今後めったにでないのではないだろうか.

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われわれはしばしば結果ばかりを追い求めてしまう.しかし,「なぜいまそれをしているのか」ということを改めて考えてみると,むしろ過程の方が重要な場合がある.

たとえば,大学受験で,「絶対に出る○○」みたいなのがあって,それだけをやって大学に合格しても意味があるのか?いったいなんのために大学に行くのか?

また,私の場合で言えば,大学教員や大学教員を目指す人たちにとって「業績を挙げること」が近年,非常に重視されている.それはそれでいいことだと思う,というか当たり前のことで今までがおかしかったのだが,しかし,「業績を出すため」にべつにそれほどやりたくもない研究をやるのって本末転倒でないか?

もちろん,「結果でなく努力を評価すべきだ」などとは思わない.結果が出なければ意味がないのは確かだ.だが,だからといって結果を出すためにどんな手段でも用いるというのは,何か違うのではないかなと思うのも確かである.

また,一方で,自分で自分のやりたいやり方を貫くなら,自分が評価されないこと・結果が出ないことについて,それを周囲のせいにして文句を言うべきではないとも思う.まあ,人間,ストレスの解消は必要だろうから,ごくごく親しい人間に言うくらいはいいだろうが,あまりおおっぴらに言うことは自分の人間性までも下げてしまう.これは自戒もこめて.
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by kunihisaph | 2010-03-30 16:08 | ヘリクツ/疑問/雑学/読書
佐藤勝彦『宇宙論入門』

http://www.amazon.co.jp/dp/4004311616/

佐藤勝彦は,アラン・グースとは独立に同時期にインフレーション宇宙論を提唱した物理学者.この人の本は他にもいくつか読んだが,簡潔で明晰で読みやすい.本書もわかりやすかった.

佐藤文隆『破られた対称性』

http://www.amazon.co.jp/dp/4569709001/

佐藤文隆は,アインシュタイン方程式の佐藤・富松解などで有名な物理学者.上記の勝彦氏とW佐藤で書いた解説論文に載せた力の分岐図がその後,世界的に広まってスタンダードとなった.

かれは「思想好き」なので(?),勝彦氏と違ってけっこう難解な文章が多い.そのなかでは本書は比較的読みやすかった.

しかし,対称性についての解説は前半だけで,後半はエッセイ的な感じ.武谷三男の三段階理論や坂田昌一の無限階層論がマルクス理論の影響を受けた考えだという話はおもしろかった.

ところどころ自慢話が入るが,これくらいのレベルになると本当にすごいので自慢話をされても許せる.

サイモン・シン『暗号解読』

http://www.amazon.co.jp/dp/410215972X

暗号の歴史をドラマチックに描く.新しい暗号があらわれると,それを破る方法が開発され,次はまたその方法では破れない暗号があらわれ・・・.そして最後にはどんな暗号でも破ってしまう量子コンピュータのアイデアが提示されたかと思えば,最後にはそれでさえも破れない「究極の暗号」量子暗号があらわれ・・・という(これまでの暗号は「事実上」破れない暗号だったが,これは「原理上」破れない).

あいまあいまに暗号がやぶられるかどうかが大きく影響を与えた歴史上のエピソードも交え,相変らずうまい.

『代替医療のトリック』に比べると,扱っている題材のせいもあるが,よりドラマティックで,たぶんより広い層に受けるのではないかと思う.『フェルマーの最終定理』も,ドラマティックではあったけど,扱っている題材の認知度も考えると,これもやはり本書の方がより広いかも知れない.
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by kunihisaph | 2010-03-22 12:26 | ヘリクツ/疑問/雑学/読書

近代学問シンポジウム

土日とシンポジウムがあった.いろいろな分野の人たちを集めて,「近代学問の起源」というテーマで講演してもらうなかなか面白い試みだったと思うのだが,意外と人の集まりが悪かった.6-70人くらい?宣伝が足りなかったか?

しかし,二日間で13人の講演者がいたのだが,時間を守ったのは高等研究所から参加した私を含めた3人だけ.他の講演者は数分どころではなく,10分とか20分とか超過していた.

これは高等研がどうのという話ではなくて,高等研からの講演者は政治学,経済学,科学哲学で,他の講演者は主に歴史学や文学研究だったので,分野のカルチャーの違いなのかなと思った.

いろいろしゃべりたいことがあるのはわかるが,時間を決められている以上,時間内で収まるように話すというのも研究者としての能力の1つだと思うのだが.

とはいえ,懇親会は非常に楽しかった.こういった異分野の研究者の方たちと交流するのはいろいろと刺激になってよい.

ちなみに講演のスライドをアップしておきます.

http://www.geocities.jp/enten_eller1120/modernscience.pdf

pdfファイルなので,acrobat readerがないかたは

http://www.adobe.com/jp/products/reader/

でダウンロードしてください.

音声は主催者が録音していたみたいなので,もし私の分だけ切り離してファイルにできるようなら,主催者の許可を得てアップしたいと思います.
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by kunihisaph | 2010-03-15 13:21 | 研究生活
サイモン・シン『代替医療のトリック』

http://www.amazon.co.jp/dp/4105393057/

原題はTrick or Treatment?とうまいタイトルなのだけど,邦題はやや味気ない.

各所で話題のサイモン・シンの新作.うむ,あいかわらずおもしろい.
フェルマーの定理もそうだったんだけど,同じようなテーマを扱っている他書よりも彼の書いた本はずっと読みやすくおもしろい(けどレベルを落としているわけではない)のは一体なんでなのだろう?このあたりのテクニックは研究する価値がある気がする.

で,鍼,ホメオパシー,カイロプラクティック,ハーブ療法について,
通常医療と比べて効果があるかどうか,危険性はないのかを論じていく.方法論についてちゃんと議論されているのもよい.

鍼というのは効果があるものだと思っていたのだけど,そうではないらしい.鍼の効果については科学的な研究も最近まで質の高いものはなかったようで,2003年のWHOの研究では効果ありとされていたのだが,これは問題がある研究だったようだ.現在では,いくつかの痛みや吐き気には効果があるかもしれないけど,それも通常医療を上回るものではないし,ほかの症状に関しては効果がないという結論に収束しつつあるらしい.危険性については,熟練の鍼師ならば,不潔な鍼を使うことによる感染にさえ気をつければ害はあまりないとのこと.

ホメオパシーは,プラセボ以上の効果はまったくない.まあそりゃそうだろう.

カイロプラクティックってただの整体だと思っていたら,妙な思想をベースにしてできた「どんな病にも効く」療法なんですね.もっとも,現在では「ミキサー」といって,あまりエキセントリックな主張をしないカイロプラクターもいるらしい.ミキサーによる治療ならば,腰痛に関しては多少の効果はあるかもしれないらしい.ただ,理学療法と比べてとくに効果があるわけではないし,下手に頚椎をいじられると重篤な障害が出る可能性があるので,わざわざ高い治療費を出して理学療法ではなくカイロプラクティックに頼る必要性はない.

ハーブ療法は,まあハーブ自体が現在通常医療で使用されている薬のもとになったものもいくつかあるのだから,効くことは効くようです.ただ,通常医療の薬より効くというわけではないし,他の薬と併用する際の相互作用のことも考慮しなければならない.

で,プラセボでも結果として治ればいいのではないか,という意見もあるが,確かに治ればいいのだけど,こういった代替医療を信用するあまり,通常医療を受けることを拒否して取り返しのつかないことになる可能性を考えなければならなし,通常医療ならば,じっさいの効果+プラセボ効果があるわけだから,わざわざプラセボ効果しかない代替医療を,それも高いお金を出して受ける必要はないという議論は,そのとおりだと思った.

また,一方で,このような代替医療が広がったことの責任者として医療研究者が挙がっていた.これは疑似科学一般についても,その責任の一端が科学者そして科学哲学者にあるということにも通じていると思う.

・杉晴夫『現代医学に残された七つの謎』

http://www.amazon.co.jp/dp/406257652X/

鍼灸治療効果の謎/磁場の人体に影響を及ぼす影響の謎/睡眠の謎/「病は気から」の謎/「天然のリニアモーター」筋肉の謎/記憶のメカニズムの謎/人体の設計図の謎

といった7つのなぞについて解説.著者自身の専門は筋収縮.

鍼灸治療の謎では,鍼灸の効果は科学的に実証されたという前提での議論になっている.古いデータを参照にしてしまったのかもしれない.

磁気治療についてはサイモン・シンの上掲書でも言及されているが,少なくとも静磁場がなんらかの症状に効くという科学的根拠はない.

しかし,著者はピップエレキバンの製造元の役員にテストを頼まれことがあるらしい.厚生省から(エレキバンの製造元への)お叱りがあったそうだ.

で,マウスでテストをしてみると,血流増大の効果はあったらしい.ただ,これも個体差があるし,人体の実験はやっていないし,治療に効果があるかという実験もやっていない.
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by kunihisaph | 2010-03-07 16:59 | ヘリクツ/疑問/雑学/読書
イーヴァル・エクランド『数学は最善世界の夢を見るか』

http://www.amazon.co.jp/dp/4622074672

ライプニッツによると,この現実世界は,可能な世界のうちでもっとも善い世界だという.

ライプニッツより後の時代のモーペルテュイは,「作用量がもっとも小さくなる運動が実現する」という「最小作用の原理」こそが,神がこの世が最善になるように世界をつくった証拠だとする.

ところが,(光も含めた)物質の運動はつねに作用量がもっとも小さくなるわけではない.厳密に言うと,成り立っているのは「作用量が停留値を取るような世界」が成り立っている.

最小値が停留値になることによって,「神秘性」がややうすれた.しかも,(本書では言及されていないが)最小作用(停留作用)の原理ってラグランジュ方程式から導かれるんじゃなかったっけ?

というわけで,そういう目的論的世界観は,ついに物理の世界からは消えてしまった.

また,後半では,生物の世界や社会学にまで「最善」というキーワードで切り込んでいく.
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by kunihisaph | 2010-03-06 21:28 | ヘリクツ/疑問/雑学/読書