アマチュア精神
2010年 03月 30日
女子フィギュアスケートの浅田真央選手が先日開催された世界選手権で優勝した.
今シーズン序盤ではノーミスで滑りきることができず,キム・ヨナ選手との直接対決でも大差をつけられ負けていた.
周囲からは,プログラムが悪い,現行のルールではリスクがあってリターンの少ない3Aにこだわらず,キムヨナ選手のように,難易度の低い(といっても,一般レベルの選手からすると十分に難易度が高いと思うが)プログラムをノーミスで高い質でやるようにした方がいいなどといった声も聞かれた.マスメディアでは,正直「浅田真央バッシング」とも取れるような記事もしばしば見られた.
しかし,彼女は3Aにこだわって,そしてシーズン最後の大会で,2008年のGPファイナル以来久しぶりにキムヨナ選手との直接対決を制して優勝した.
キムヨナ選手は,ある意味「プロ意識」が高いと思う.いまのコーチの指導を受け始めたばかりの頃は3Aに挑戦したいと思っていたようだが,コーチから「勝つためには3Aをあきらめろ」と言われ,それを受け入れ,現行ルールを徹底的に研究して,「勝つため」にオリンピックシーズンには前シーズンとほとんど変わらないプログラムをもってきて,個々の技の質を高めることに専念した.
もちろん「前シーズンと変わりない」「難易度の低い」といっても,本番でノーミスで滑りきることは難しいだろう.それをやり遂げる彼女の精神力も含めてプロとしての意識が強いと思う.
アマなのだが,「なにがなんでも絶対に勝たなければいけない」という意識が強く,そういう意味でここでは「プロ意識が強い」と言っている.もちろん,それはそれで賞賛すべきであり,誰にでもできることではない.
一方,浅田選手の3Aへのこだわりは,たしかに「プロ」としての意識には欠ける(実際にアマチュアなのだが).4回転ジャンプを捨てて,「勝つため」のプログラムを選択した安藤美姫選手の方がプロ意識が高いといえる.
しかし,浅田選手のアマ精神は,アマチュアのいいところがあらわれたものだと思う.「なにがなんでも勝てばいい」というものではなく,「自分の信念の貫いたうえで」勝たなければ意味がない,という偏屈ともいえるほどのこだわり.
もちろん,そのこだわりが「勝てないことへの言い訳」になれば意味がないが,彼女は現行ルールへの不満を言わずに,「勝てないのは自分が未熟だから」として技を磨きつづけた.そこがすばらしい.
そして,その結果がシーズン最後の大会でのオリンピック金メダリストを抑えての優勝である.
日本人だからという贔屓目もあるのかもしれないが,これほどの選手は,今後めったにでないのではないだろうか.
---
われわれはしばしば結果ばかりを追い求めてしまう.しかし,「なぜいまそれをしているのか」ということを改めて考えてみると,むしろ過程の方が重要な場合がある.
たとえば,大学受験で,「絶対に出る○○」みたいなのがあって,それだけをやって大学に合格しても意味があるのか?いったいなんのために大学に行くのか?
また,私の場合で言えば,大学教員や大学教員を目指す人たちにとって「業績を挙げること」が近年,非常に重視されている.それはそれでいいことだと思う,というか当たり前のことで今までがおかしかったのだが,しかし,「業績を出すため」にべつにそれほどやりたくもない研究をやるのって本末転倒でないか?
もちろん,「結果でなく努力を評価すべきだ」などとは思わない.結果が出なければ意味がないのは確かだ.だが,だからといって結果を出すためにどんな手段でも用いるというのは,何か違うのではないかなと思うのも確かである.
また,一方で,自分で自分のやりたいやり方を貫くなら,自分が評価されないこと・結果が出ないことについて,それを周囲のせいにして文句を言うべきではないとも思う.まあ,人間,ストレスの解消は必要だろうから,ごくごく親しい人間に言うくらいはいいだろうが,あまりおおっぴらに言うことは自分の人間性までも下げてしまう.これは自戒もこめて.
今シーズン序盤ではノーミスで滑りきることができず,キム・ヨナ選手との直接対決でも大差をつけられ負けていた.
周囲からは,プログラムが悪い,現行のルールではリスクがあってリターンの少ない3Aにこだわらず,キムヨナ選手のように,難易度の低い(といっても,一般レベルの選手からすると十分に難易度が高いと思うが)プログラムをノーミスで高い質でやるようにした方がいいなどといった声も聞かれた.マスメディアでは,正直「浅田真央バッシング」とも取れるような記事もしばしば見られた.
しかし,彼女は3Aにこだわって,そしてシーズン最後の大会で,2008年のGPファイナル以来久しぶりにキムヨナ選手との直接対決を制して優勝した.
キムヨナ選手は,ある意味「プロ意識」が高いと思う.いまのコーチの指導を受け始めたばかりの頃は3Aに挑戦したいと思っていたようだが,コーチから「勝つためには3Aをあきらめろ」と言われ,それを受け入れ,現行ルールを徹底的に研究して,「勝つため」にオリンピックシーズンには前シーズンとほとんど変わらないプログラムをもってきて,個々の技の質を高めることに専念した.
もちろん「前シーズンと変わりない」「難易度の低い」といっても,本番でノーミスで滑りきることは難しいだろう.それをやり遂げる彼女の精神力も含めてプロとしての意識が強いと思う.
アマなのだが,「なにがなんでも絶対に勝たなければいけない」という意識が強く,そういう意味でここでは「プロ意識が強い」と言っている.もちろん,それはそれで賞賛すべきであり,誰にでもできることではない.
一方,浅田選手の3Aへのこだわりは,たしかに「プロ」としての意識には欠ける(実際にアマチュアなのだが).4回転ジャンプを捨てて,「勝つため」のプログラムを選択した安藤美姫選手の方がプロ意識が高いといえる.
しかし,浅田選手のアマ精神は,アマチュアのいいところがあらわれたものだと思う.「なにがなんでも勝てばいい」というものではなく,「自分の信念の貫いたうえで」勝たなければ意味がない,という偏屈ともいえるほどのこだわり.
もちろん,そのこだわりが「勝てないことへの言い訳」になれば意味がないが,彼女は現行ルールへの不満を言わずに,「勝てないのは自分が未熟だから」として技を磨きつづけた.そこがすばらしい.
そして,その結果がシーズン最後の大会でのオリンピック金メダリストを抑えての優勝である.
日本人だからという贔屓目もあるのかもしれないが,これほどの選手は,今後めったにでないのではないだろうか.
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われわれはしばしば結果ばかりを追い求めてしまう.しかし,「なぜいまそれをしているのか」ということを改めて考えてみると,むしろ過程の方が重要な場合がある.
たとえば,大学受験で,「絶対に出る○○」みたいなのがあって,それだけをやって大学に合格しても意味があるのか?いったいなんのために大学に行くのか?
また,私の場合で言えば,大学教員や大学教員を目指す人たちにとって「業績を挙げること」が近年,非常に重視されている.それはそれでいいことだと思う,というか当たり前のことで今までがおかしかったのだが,しかし,「業績を出すため」にべつにそれほどやりたくもない研究をやるのって本末転倒でないか?
もちろん,「結果でなく努力を評価すべきだ」などとは思わない.結果が出なければ意味がないのは確かだ.だが,だからといって結果を出すためにどんな手段でも用いるというのは,何か違うのではないかなと思うのも確かである.
また,一方で,自分で自分のやりたいやり方を貫くなら,自分が評価されないこと・結果が出ないことについて,それを周囲のせいにして文句を言うべきではないとも思う.まあ,人間,ストレスの解消は必要だろうから,ごくごく親しい人間に言うくらいはいいだろうが,あまりおおっぴらに言うことは自分の人間性までも下げてしまう.これは自戒もこめて.
by kunihisaph
| 2010-03-30 16:08
| ヘリクツ/疑問/雑学/読書